韓デラ(以下K): 本作品は韓国でも珍しい刑事ドラマです。
撮影中に苦労された点や、心に残っているシーンがあれば教えてください。
ソン・イルグク(以下S):本作に出演するにあたり、新人のような気持ちで新たに出発しようと思い、本当に最善を尽くして取り組みました。苦労したというよりは、撮影が始まる30分前に現場入りし、照明スタッフの方々や監督と話をしたりして、監督とスタッフ皆が頑張って撮影したという思いがあります。だから、いつも楽しく演じることができました。印象に残ったシーンですか?(考えて…)亡くなった娘の遺品を安置してある納骨堂に行き、娘の遺影に語りかけるシーンです。未だにあの時の心の痛みを憶えています。
K: 「強力班」を出演作として選んだ理由は?
S: 「強力班」に出演する前、「私は君だ」という芝居で舞台に初挑戦しました。これまで経験したことがない新たな分野に挑戦する時は、誰もが恐怖を感じるものです。セリフ一行、眼差し一つにも神経を注ぎ、演技の原点を考え、演技に対する自分の覚悟を決めるきっかけになりました。
新しい転換点を迎えた…と自分自身、感じるようになったそんな時、「強力班」への出演依頼をいただいたのです。台本を一回読んだだけで、この作品を引き受ける理由は十分でした。内容の面白さももちろんですが、私が演じる“パク・セヒョク”という役がとても魅力的な人物だったからです。加えて、監督の情熱も強く伝わってきました。「強力班」という作品を通じて、私自身、今後の演技に対してより一層深く考えることが出来るようになりました。
K: 刑事パク・セヒョクを演じる上で、役作りで苦労したこととは?
S: これまで演じてきたキャラクターとはかなり違った役柄だったので、とても心配でした。それだけに準備を重ね、寒さと激しいアクションにも覚悟をして臨みました。役作りのため、ソウル江南署で一晩当直にあたったのですが、その日は、すごく寒くて何も起こらない静かな日でした。ただ実際の刑事さんたちは、本当に苦労をされていました。肉体的にではなく精神的に…。徹底した使命感と家族の犠牲なしにはできない仕事だと思いました。その方々に迷惑をかけないように頑張ろうという覚悟で当直に臨んだのですが、寒いだけで何も事件が起こりませんでした。最初は少し残念に思いましたが、今考えてみると逆にそれが刑事の方々の苦労を理解するためにとても役立ったと感じます。当直で、解決した事件現場の死体写真を持っているという刑事さんから話を伺いました。今でもその事件で覚えた憤りを忘れないために、写真を持ち歩いているのだそうです。何も起こらない当直の日だったからこそ、普段はなかなか聞くことができない貴重な話を聞くことができました。そこから単純に怖さとか怒りではなく、静かで重い責任感が自分にも湧いてきたのです。
K: 「強力班」の楽しみ方、見どころを教えてください。
S: セヒョクは今まで引き受けた役の中で最も明るい役柄です。犯人の前ではとても鋭い感性を見せるのに、普段はどこかネジが一本はずれたようにお粗末な面もあり、個人的にも興味深いキャラクターです。刑事といっても、身近な友人のように親しみを持ってもらえる人物にしようと頑張って演じた作品なので、楽しんでいただけると幸いです。一つの作品を作り上げるためには、自分一人の努力だけでなく、スタッフ、俳優の力が必要です。この作品は、俳優という仕事について改めて考える良い機会となりました。ゆえに、このドラマには格別な愛情があります。多くの経験を得た貴重な時間を過ごしたドラマだったと思います。日本でも、一人でも多くの方に見ていただきたいです。
K: ソン・ジヒョさんとは「朱蒙〔チュモン〕」以来の再共演となりましたが、いかがでしたか?
S: もちろん、また一緒に演じることができて嬉しかったです。女優さんは敏感で、繊細な部分もありますから、戸惑う時も多いのですが、ジヒョさんは明るくて温かくて、一方でたくましく、根性もある女優さんだと思います。たまに男っぽい部分もありますしね(笑)。
K: 最後に、日本のファンに対する印象は?
S: 日本のファンの方は、本当に情熱的だと思います。
心のこもった贈り物や手紙を読んでも愛情を感じることができます。本当に心から感謝しています。
ソン・イルグクさん、貴重なお話を聞かせていただき、ありがとうございました!
(2012年5月11日 ソウルにて)