あらすじ
明朝第12代皇帝・嘉靖帝の時代、厳嵩・厳世蕃の父子は政敵を陥れて朝廷を牛耳っていた。嘉靖37年、海賊の襲来が相次ぐ中、兵部の沿海防衛地図が何者かに盗まれ、嘉靖帝は特務機関の“錦衣衛”指揮使・陸廷の息子である陸繹にその調査を命じる。一方、兵部の高官が焼死体で発見される事件が発生し、捜査をすることになった“六扇門”の名捕快・袁今夏。屋敷の主人が火事の前に殺されていたと見抜くが、そこに陸繹が現れて遺体は別人だと指摘される。しかも事件捜査を錦衣衛に横取りされてしまう。今夏は彼に負けまいと独自に捜査を続けるが、行く場所に必ず陸繹が現れ…。
第1話 失われた兵力配置図
明朝、嘉靖(かせい)年間。六扇門(りくせんもん)の捕快(ほかい)・袁今夏(えんきんか)は兵部郎中・曹昆(そうこん)の焼死事件の現場に向かった。検視の結果、亡骸は曹昆自身だと判断した今夏だが、そこへ乗り込んできた錦衣衛(きんいえい)の陸繹(りくえき)は見立ての誤りを暴き、独断で捜査を取り上げたうえ、今夏の銃を持ち去る。陸繹に曹昆の事件を錦衣衛より先に解決できれば銃を返してやると言われた今夏は、銃を取り戻すため、また捕快としての誇りにかけて、相棒の楊岳(ようがく)とともに曹昆の居場所を探り始める。
第2話
今夏は曹昆の隠れ家を城外で発見。楊岳が現れないため、1人で曹昆を捕らえようとしたものの、銃がないため逃げられそうになる。その場で傍観していた陸繹が曹昆の前に立ちはだかるが、手柄を取られまいとした今夏が手を出したため、結局、取り逃がしてしまう。腹の虫が治まらない今夏は陸繹を出し抜くため、曹昆の娘の動きから手がかりを探り、曹昆は都の質店にいると目星をつける。しかし質店に向かうと、そこにはまた陸繹の姿が…。
第3話 密命
今夏と陸繹は盗まれた兵力配置図を取り戻したが、事件の黒幕を聞き出す前に曹昆は暗殺されてしまう。曹昆の腕には倭寇(わこう)とのつながりを示す入れ墨があった。陸繹は皇帝から命令を受け、皇族であることを笠に着た健椹(けんちん)親子の横暴の実態を調べることを表向きの名目に、兵力配置図盗難の背後にいる黒幕と、その陰謀を探るため揚(よう)州に向かう。三法司からは楊程万(ようていばん)に陸繹の調査へ協力せよとの指示が下り、今夏と楊岳もこれに同行することになる。
第4話
船が出航すると陸繹は船室に程万を訪ねた。2人の話を盗み聞きした今夏と楊岳は程万がかつて陸廷(りくてい)の配下で錦衣衛の精鋭だったことを知る。師匠が錦衣衛を辞めた理由を聞き出すため、今夏は陸繹に取り入ろうとするが、そのことで程万に厳しくとがめられ罰を受けるはめに。師匠に告げ口された今夏は陸繹への反感をますます募らせる。そんな中、奉国(ほうこく)将軍に届けられる祝儀の品々が船室から忽然と消え、今夏らに疑いがかけられた。
第5話
幽霊船に乗り移った陸繹と今夏は怪しい船の正体を見破ったが、浸水し始めた船から逃げ出す際に、軽身功(けいしんこう)ができない今夏は水中に落ちてしまう。水面に浮かぶ蝋や船の喫水線から、ある仮説を思いついた今夏は船側を探り、船底の密室に祝儀の箱が隠されているのを発見する。しかし、その時、黒装束の人影が現れ、今夏は水中に引きずり込まれた。刃物を持って襲いかかる黒装束の男に必死で抵抗する今夏だが、次第に意識が遠のいていき…。
第6話 すり替えられた制牌
謝霄(しゃしょう)は沙修竹(さしゅうちく)を助け出すため、策を講じて今夏から盗み取った制牌を使い、牢獄に入り込んだ。しかし逆に捕らえられ、からくも上官曦(じょうかんぎ)に救い出される。一方、制牌をすり替えられた今夏は陸繹から賊との関係を問いただされる。逆上した今夏は売り言葉に買い言葉で賊の仲間だと認め、陸繹から「出ていけ」と言われて涙に暮れる。すり替えは謝霄の策だったと気づいた今夏は烏安幇(うあんほう)に乗り込んでいくが、そこで驚くべき事実を知る。
第7話 苦肉の策
謝霄と飲んで酔い潰れた日の翌朝、今夏は楊岳とともに修竹の護送に同行せよとの命を受けた。しかし護送の途中で賊の襲撃を受け、修竹に逃げられてしまう。単身、修竹を追った今夏の前で覆面を取った賊は、なんと謝霄だった。謝霄は修竹の引き渡しを拒み、修竹の代わりに自分を殺せと迫る。謝霄の義侠心を理解しつつも、みすみす見逃すわけにいかない今夏は、取り逃がした体を装うため、自分の腕を斬って逃げろと言うが…。
第8話 消えた10万両
10万両の官銀が忽然と消え、銀庫の鍵を持つ周顕已(しゅうけんい)が横領の疑いで捕らえられた。しかし顕已は銀子1万両の横領は認めたものの、その後、元に戻したと主張し、盗んだ目的を明かそうとはしない。陸繹と今夏は銀庫を調べるが役人以外の足跡はなく、部外者が入り込んだ形跡はない。官銀の護送を烏安幇が請け負ったと聞いた2人は上官曦に話を聞くが、その際、顕已が持っていたのと同じ香り袋が彼女の腰に掛かっていることに気づく。
第9話 凶器のない殺人
上官曦の香り袋は翟蘭葉(たくらんよう)から贈られた物だと知った陸繹と今夏は、蘭葉に接触し、捕らえられる前日に顕已が蘭葉と会っていた可能性を導き出す。その矢先、顕已が獄中で急死した。外傷も凶器も刺客が侵入した形跡もなく、鼓膜が破れているのみだが自然死とは思えない。南少林寺で武術を学んだ謝霄に、外傷もなく人を殺し鼓膜が破れるような技はあるかと尋ねた今夏は、かつて芝居小屋で同様の殺人事件があったと聞かされる。
第10話
身分を隠し、弟子として春喜座(しゅんきざ)に潜入した陸繹と今夏。一世を風靡した演目でありながら、役者の死から10年余りが過ぎた今でも第一香は上演されず、一座では禁句となっていた。座長は夜中に人目を忍んで抜け出すと、かつて一座が芝居を打った閬苑(ろうえん)を訪れ、雲遮月(うんしゃげつ)を供養しつつ霧隠花(むいんか)という名を口にした。手がかりを求めて閬苑にやってきた陸繹と今夏は幻覚術にはまり、雲遮月が第一香を演じる最中に急死する光景を目の当たりにする。
第11話 湯殿の危機
身辺を探られていることに気づいた座長は湯殿で今夏に刃物を突きつけた。後ろ暗いところがあると見た陸繹と今夏は座長を捕らえて詮議するが、座長は師兄の雲遮月に恨みを持っていたことは認めたものの、替え玉の件は知らず、自分は殺していないと言い張る。陸繹は閬苑での怪奇現象を亡霊の仕業ではないと言うが、今夏は閬苑で子供の幽霊を見たことが気になっていた。再び閬苑を訪れた今夏は子供の幽霊の正体と、ある事実を知り…。
第12話 謎多き幕切れ
陸繹と今夏が打った大芝居で、雲遮月と顕已を殺したのは蘭葉であることが明らかになった。替え玉として自分を利用した雲遮月と、10万両を横領しながら身請けしない顕已を恨むがゆえの殺しだったとして罪を認めたものの、蘭葉は裁きを待たず毒を飲んで自害する。刺客は明らかになったが10万両の行方は知れぬままに。陸繹らは蘭葉がよく姿を現した場所から一夜林(いちやりん)に目星をつけた。だが林の中を捜索する今夏の前に現れたのは…。
第13話
突如、現れた厳世蕃(げんせいはん)は陸繹と今夏が見つけ出した官銀を、生き返った蘭葉とともに引き渡せと言う。納得がいかない今夏だが、陸繹は反論もせず要求どおりに引き渡す。さらに厳世蕃は陸繹と今夏を自分の船に誘って宴席を設け、一晩泊まっていけと命じた。今夏が部屋に下がると厳世蕃は最も好みの女子に夜伽をさせようと陸繹に告げる。体よく断る陸繹だが、その夜、案内された船室の寝台には、しびれ薬を盛られた今夏が横たわっていて…。
第14話 冷血漢の素顔
改めて親捜しの手伝いを頼むため、今夏は精進料理で陸繹をもてなした。協力を明言はしないものの、拒絶もしなかった陸繹に気をよくする今夏。だがこのことを知った程万から、陸繹には近づくなと厳しく叱責される。官銀横領の件は一件落着したが、埠頭で騒動が起きた。董(とう)家水寨(すいさい)の寨主である董斉盛(とうせいせい)は、烏安幇が持つ埠頭の管轄権を求めて謝霄らと揉める。韋応(いおう)知府の仲裁により、双方の闘技で勝ったほうが管轄権を手にすることとなるが…。
第15話 届かぬ想い
元宵節(げんしょうせつ)の夜、陸繹や今夏らは揚州の街に出かけた。途中、謝霄は一行から外れて今夏を呼び出し、改めて愛を告白するがあえなく玉砕する。陸繹と今夏は水辺に腰を下ろして願を掛け、しばし穏やかな時間を過ごした。楊程万の脚の治療も終わり、都に戻ろうとしていた矢先、烏安幇の配下が郊外の芦原で大勢の倭寇に襲われた。芦原に向かった陸繹と今夏、それに謝霄は倭寇を見つけて後を追うが、怪しい竹笛の音を聞くと意識を失い…。
第16話 竹笛の響く村
気がつくと陸繹と今夏は石柱に縛りつけられ、龍胆(りゅうたん)村の人たちに囲まれていた。怪しい道士・藍青玄(らんせいげん)は今夏らを村に災いをもたらす疫病神だと言い放ち、2人はとらわれの身となる。夜になって2人は薪小屋を抜け出したものの、村を出るためのはしごは何者かに断ち切られ、帰路を絶たれていた。村を出ようとしていた青玄に出くわし、怪しい男たちが何者かを林の中へ連れ去ったと聞いた今夏らは、謝霄かもしれないと林の中へ捜しに出かけ…。
第17話 腕輪に秘められた思い
空き家で夜を明かすことにした今夏ら。夜中に物思いにふける陸繹に声をかけた今夏は、腕輪が母の形見だと聞かされる。朝になり、馬のいななきにおびき出された陸繹と今夏は倭寇に襲われた。2人は馬を奪って逃げるが、先を走る陸繹が腕輪を落としたことに気づいた今夏は急いで引き返す。一方、上官曦によこしまな想いを抱く斉盛は、卑怯な手段で上官曦を董家水寨に連れ去った。楊岳が駆けつけたものの、一緒に捕らわれの身となり…。
第18話
陸繹と謝霄が生贄として井戸に沈められたかもしれないと知った今夏は、2人を助けるため井戸に入る。しかし2人の姿はなく、井戸の奥には人が捕らわれていた。倭寇に捕らわれて1年もここにいるというその人物は、驚くべきことに意外な人物と繋がりがあった。丐(かい)おじさんと名乗る彼を助けようとする今夏だが、頑丈な足枷を壊せなかった。今夏は必ず助けに来ると約束して引き返すが、迷路のような道を戻る途中、倭寇に襲われて…。
第19話
陸繹が鎖龍井(さりゅうせい)の構造を見抜いたことで、今夏らは井戸からの脱出に成功。しかし、鎖龍井が破られたことを知った毛海峰(もうかいほう)は村民を皆殺しにすべく、乱心者を放って龍胆村を襲撃させる。村に戻った陸繹らもこれに応戦し、藍玉簪(らんぎょくさん)の花を燃やして乱心者を抑えるが、今度は倭寇を引き連れた毛海峰が現れ大乱闘となる。負傷した毛海峰は撤退したものの、村は爆薬で焼かれ、今夏をかばって毒が塗られた暗器を受けた陸繹は重症に陥ってしまった。
第20話 取り引き
暗器で受けた傷の手当てのため、陸繹と今夏は名医を訪ねて楓林坳(ふうりんおう)を目指した。だが陸繹は解毒薬も効かず歩くことさえままならない。今夏の必死の励ましで何とか旅籠にたどり着いたものの、そこへ捕らわれの身となった陸大堅(りくたいけん)を引っ立てて毛海峰と配下が現れる。大堅を救い出し、ひそかに逃げ出した3人だが毛海峰に気づかれ、結局、捕らわれてしまう。今夏の銃に目をとめた毛海峰は、銃の設計図と引き換えに命を助けると言うが…。
第21話 命を懸けた大芝居
鎮江に到着した今夏は隙を突いて銃を取り返し、大堅が時間を稼ぐ中、陸繹を連れて逃走。だが結局、崖に追い詰められて逃げ場を失ってしまう。毛海峰は陸繹の能力を買い、解毒と引き換えに仲間に引き込もうとするが陸繹はこれに応じず、今夏の肩を抱くと、つるを手に崖から飛び降りた。しかし、つるの長さは地上まで及ばず、2人は宙ぶらりんの状態に。崖の上の毛海峰は、つるを断ち切ろうと刀を振り上げるが、その時…。
第22話 百毒をもって猛毒を制す
陸繹を助けてもらうため、今夏は林菱(りんりょう)の下でかいがいしく働くが、陸繹の容体はますます悪化していく。必死で命乞いをする今夏に、林菱は恐ろしい解毒法を告げる。血清があれば解毒は可能だが、血清を作るためには今夏が猛毒を持つ蛇に噛まれる必要があり、しかも、今夏の毒を解毒できる保証はないという。自分の命を失ってもいいかと脅す林菱を前に、今夏の心は激しく揺れるが、ついに覚悟を決めて毒蛇の前に手を差し出した。
第23話 喜びと悲しみ
今夏の血を加えた薬で陸繹は意識を取り戻した。命を取り留めたことを喜ぶ今夏だが、悪くなっていく自分の体調に複雑な思いを抱く。今夏の血液の流れが人よりも速いため、百毒の作用が現れるのが早かった。陸繹の治療にはまだ今夏の血が必要だが、治療が終わってから解毒するのでは、今夏は助かりそうにない。何とか今夏を助けようと、林菱や大堅が文献をあたって解毒法を探す中、死を覚悟した今夏は遺書を残して姿を消し…。
第24話 腕輪の奇跡
死に場所を探してさすらう今夏は廃屋を見つけた。涙の別れは性分に合わないと黙って皆のもとを去った今夏だが、1人寂しく死んでいくことに思わず涙する。残された遺書を見て今夏を捜しに出た陸繹は、廃屋の中にいる今夏を見つけ出した。自分が死んだあとのことをくれぐれも頼む今夏。陸繹は母の形見の腕輪を贈って逝くなと励まし、林菱らのもとに連れ帰る。しかし残された解毒法は、瀕死の今夏にはあまりにも危険な方法だった。
第25話 謎の失踪事件
今夏の回復を喜んだのもつかの間、毛海峰が配下とともに楓林坳を襲撃した。何とか撃退したものの、楊岳と上官曦は崖から落ちてしまい姿が見えない。人手を集めて2人を捜すため、一同はいったん揚州に戻る。揚州の官駅に戻った陸繹に都からの知らせが届いた。元明大師(げんめいだいし)が作った丹薬で皇帝が体調を崩したと知った陸繹は大師を都に護送するため、直ちに丹青閣(たんせいかく)に向かう。しかし、陸繹らが到着したその晩、丹青閣では不可解な事件が起きた。
第26話 嫉妬深い邪魔者
二胖(にはん)の失踪に、親しかった弟弟子の三痩(さんそう)は衝撃を受けて寝込んでしまった。三痩の身を気遣う大師だが、三痩は大師を恐れているかに見える。丹薬の件で丹青閣が世間の非難を浴びるようになると同時に起こった奇っ怪な事件に、何らかの関連を疑う今夏だが、確かな手がかりがなかった。今夏は事件解決の助っ人として林菱と大堅も丹青閣に呼び寄せる。捜査はこれからという矢先、夜の丹青閣に石新(せきしん)の悲鳴が響き渡る。
第27話 見えない賊の影
石新が第2の犠牲者となったことで陸繹は、賊は大師ではないかと疑い始める。だが証拠はなく、大師が石新を殺す動機も思い当たらない。陸繹がゆさぶりをかけると大師は陸繹を自分の部屋に呼び出すが、事件への関与を追及されても動揺すら見せない。部屋に焚かれた迷魂(めいこん)香のせいで、陸繹の意識は次第に遠のいていく。ほどなく、部屋で倒れている陸繹を今夏が発見するが、意識を取り戻した陸繹は何やら様子がおかしくなっていて…。
第28話 添い寝の夢
記憶を失い15歳の頃の言動をし始めた陸繹は僅かな間に、さらに13歳にまで退行し、今夏に腕輪を渡したことも忘れてしまった。錦衣衛としての役目も忘れた陸繹に捜査は中断してしまう。二胖と石新を殺した可能性があるのは大師と青玄、それに三痩と見た今夏らは、それぞれに探りを入れるが怪しい点は見つからない。そうこうするうち、陸繹は自分を8歳だと言いだし、今夏の寝室に入り込んで一緒に寝てくれと要求して…。