
あらすじ
魔界を治める逆輪(ぎゃくりん)は、南華(なんか)派の仙女・水姫(すいき)を愛した結果、戦いに敗れ命を落とす。14年後、貧しい孤児が南華派の仙人・洛音凡(らくいんはん)の唯一の弟子となり、重紫(ちょうし)と命名される。邪気を生まれ持つ重紫が平穏な人生を送れるようにと、洛音凡は心を砕き、彼女は師を慕うようになる。しかし、重紫の出生の秘密を知る魔族は彼女を利用しようと陰謀をめぐらせ、惹(ひ)かれ合う重紫と洛音凡は逆らえない運命に翻弄されていき…。仙界と魔界、三生三世を通して試される不滅の愛の終着点は!?
第1話 神仙はすぐそばに
物乞いの虫子(ちゅうし)は泥棒だと疑われ、吊るされていたところを仙門の尊者(そんじゃ)・洛音凡(らくいんはん)に助けられる。しかし洛音凡にもらった菓子をいじめっ子に奪われ、怒りとともに邪気を爆発させてしまう。そこに現れた仙門の仙人・楚不復(そふふく)に「人に殺意を向けてはいけない」と諭される。この世に絶望し、神仙はいないと思っていた虫子だったが、楚不復の勧めで仙門への弟子入りを志す。長い道のりの末にたどり着いた南華(なんか)山は、常人には見えない不思議な山だった。
第2話 邪気を宿す娘
苦難を乗り越えて南華山に登った虫子たちは、高位の仙人から弟子に選ばれることになった。だが、督教(とくきょう)尊者・閔雲中(びんうんちゅう)は邪気を持つ虫子を山から追い出そうとする。大騒ぎの中、重華(ちょうか)尊者・洛音凡が現れ、虫子を弟子に取ると宣言。新たに重紫(ちょうし)という名を与え、重華宮に連れて帰った。重紫の邪気は強すぎて害になると尊者たちが心配する中、童心を失わない重紫は仙人生活を楽しみ始め、さまざまなトラブルを起こしては洛音凡を困らせる。
第3話 法術を学びたい
師匠の洛音凡と2人きりの生活を始めてから3年が経ち、こっそり紫竹(しちく)峰を抜け出した重紫。久しぶりに会った同門の弟子たちは修行を重ねており、重紫だけが法術を習わず、法器も持っていないことを知ってしまう。「毎年、全弟子が参拝するという祖師(そし)殿にも入ったことがない」と仙長(せんちょう)の慕玉(ぼぎょく)に相談し、案内してもらうが、封印されている魔尊(まそん)の令牌(れいはい)・天魔(てんま)令に恐怖を覚えて立ち去ってしまう。重紫は法術を教わりたいと師匠の洛音凡に懇願するが…。
第4話 友との別れと新たな気持ち
青華(せいか)宮の宮主・卓耀(たくよう)の誕辰(たんしん)祝いに向かう重紫と洛音凡。途中、重紫がかつて暮らしていた街で親友の小豆子(しょうとうし)に会おうとするも、彼女は金持ちの横暴に耐えかねて、すでに自ら命を断ったあとだった。小豆子の苦労に気づけなかったと自分を責める重紫を、洛音凡は「世の無常を知ってこそよき仙人になれる」と諭す。そんな時、2人は継母に売られそうになっていた娘・聴雪(ちょうせつ)を助ける。哀れな身の上に重紫は昔の自分を重ねて、働き口を世話してやるが…。
第5話 重紫 、法器を手に入れる
青華宮での会議で、重紫は酒に酔い、宮主たちに異論を唱えてしまう。彼女を気に入る卓昊(たくこう)は勝手に重紫を「お嫁ちゃん」と呼ぶ始末。重紫は、洛音凡と卓(たく)宮主の妹・卓雲姫(たくうんき)が仲よさそうにしているのを見て、孤独と不安に襲われる。万劫(ばんきょう)を捕らえるため、洛音凡たちが出かけている間、卓昊が重紫の面倒を見ることになったが、ふざけているうちに重紫は万劫に深手を負わされてしまう。目を覚ました重紫の目の前には薬に長けた仙女の燕真珠(えんしんじゅ)がいた。
第6話 師匠を追いかけて
洛音凡から法器を賜った重紫は修行を重ね、法器に乗って飛べるようになるまで成長した。崑崙(こんろん)派の掌教(しょうきょう)・玉虚子(ぎょくきょし)は宮可然(きゅうかぜん)を捕らえ、彼女を餌に万劫を捕らえようとする。洛音凡は崑崙派の支援に行くことになり、留守番をする重紫に攻撃を跳ね返す霊台(れいだい)印を授ける。それは昔「白衣のお兄さん」が重紫に授けたしるしと同じものだった。留守番中の重紫のもとを訪ねた燕真珠が崑崙行きを勧め、その気になった重紫が秦珂(しんか)に頼み込むと…。
第7話 万劫と楚不復
洛音凡の言いつけを破り、崑崙山行きの最後尾にこっそり同行した重紫だったが、司馬妙元(しばみょうげん)に告げ口されてしまう。洛音凡の到着を待つ間、贈り物で機嫌を直してもらおうと出かけた重紫は、泉で傷を癒やしている宮可然と万劫を目撃する。万劫の顔を見て、かつて仙界入りを勧めてくれた「白衣のお兄さん」に似ていると気づくが、変わり果てた様子に困惑する。「生まれ持った邪気はあるべき場所に戻る」と言い残し、万劫は姿を消すのだった。
第8話 闇からの魔手
想いが募る卓昊は、重紫と結婚したいと父親の卓耀に懇願する。さっそく卓耀は南華を訪ね、縁談を申し込んだ。厄介払いができると喜んだ閔雲中だが、重紫がまだ若すぎることを理由に洛音凡は強くはねつけた。見下されたと感じた卓耀は憤然と去る。重華宮では、洛音凡と重紫が一層心を通わせていく。その夜、誰かが祖師殿で天魔令を呼び覚まそうとした。天機(てんき)尊者の虞度(ぐど)が天機冊(てんきさく)で昨夜の情景を再現すると、そこには重紫が映っていて…。
第9話 狙われた邪気
祖師殿で天魔令を呼び覚まそうとした罪に問われ、牢獄(ろうごく)へ送られることになった重紫。司馬妙元の監督のもと、護送されることになったが、その途中で連れ去られてしまう。連れ去られた先には万劫がおり、そこは万劫の地と呼ばれる場所だった。一報を受けた洛音凡は、虞度の力を借りて重紫の居場所を突き止めようとするがなかなか見つからない。卓昊もまた、重紫を救出しに行こうとするが、卓耀に止められ、外出を禁じられてしまうのだった。
第10話 亡月との出会い
重紫は万劫と交わした約束を守るために、熙春(きしゅん)楼で3日間だけ働かせてもらうことになる。重紫は、店先に毒を盛られた海生(かいせい)という男が倒れているのを発見し、南華で習った処方で解毒をする。無事、海生を助けた重紫だったが、洛音凡が青長(せいちょう)山に向かったという噂(うわさ)を聞き、慌てて店を飛び出す。道中、魔尊の亡月(ぼうげつ)に遭遇し、ひょんなことから彼に道案内を頼むことになった。青長山を目前にしたところで、重紫たちは魔族に襲われてしまい…。
第11話 それぞれの愛
万劫に追い出されて絶望した重紫は魔族に襲われて、深層心理にある欲望を刺激する嗜心(ししん)毒にあたり、師匠への気持ちに気づく。駆けつけた万劫が重紫を助け、2人は万劫の地に戻る。重紫の口から出た家族という言葉を聞いて宮可然を思い出す万劫。重紫は、花を咲かせて宮可然を迎えに行こうと提案し、万劫の術によって荒野に満開の桜が咲く。南華では閔雲中が重紫の魔族との結託を断じた。洛音凡が弟子を連れ戻し詮議すると言うが…。
第12話 万劫の悲しき運命
万劫の地で、万劫と宮可然は祝言を挙げ、結ばれた2人は幸せの絶頂にあった。しかし、宮可然は玉虚子から受けた一撃が致命傷となり、命が尽きてしまう。肉体が消える前に、万劫は自らが魔道に落ちたいきさつを重紫に話し、自分の二の舞になるなと忠告した。駆けつけた洛音凡と重紫が見守る中、楚不復の魂の源・元神(げんしん)は魔剣の中へと吸い込まれていった。魔剣を取り返した手柄で重紫は無罪放免となったが、不穏な空気は続いていた。
第13話 伝えられない想い
師匠の機嫌が直らずに落ち込む重紫。しかし、洛音凡は重紫のために万劫の地へ行き、万劫の蛇・虚天蛇(きょてんじゃ)を取りに行っていた。仲直りをした2人は、下界へ点心を食べに行くが、その日はちょうど縁日だった。物乞いの時は見るだけだった重紫は、初めての縁日に喜びを隠せない。しかし、戦の関係で灯籠の燃料が手に入らず、雰囲気が出ないことに落ち込む重紫。そこで洛音凡は法術で花火を打ち上げた。重紫は師匠への特別な想いを伝えようとするが…。
第14話 魔族の襲撃
重紫は、自身の邪気について洛音凡が閔雲中たちと議論しているのを聞き、魔族に利用される前に自分を鏡の中に封印してくれと頼む。紫竹峰へ戻った重紫が洛音凡の手を引っ張った拍子に2人は口づけしそうになる。その様子から洛音凡は重紫が嗜心毒に侵されていることに気づく。そして分別をわきまえるよう重紫に伝えるのだった。一方の卓昊は、洛音凡ではなく自分のそばにいてほしいと重紫を説得するが、彼女の師匠への想いは変わらぬままだった。
第15話 重紫の転生
紫竹(しちく)峰に重紫(ちょうし)の骸(むくろ)を連れ帰った洛音凡(らくいんはん)は人知れず涙を流す。そして六界(りくかい)碑で重紫を転生させたのだった。重紫の生まれ変わりの赤子を、洛音凡は泱(おう)洲の文(ぶん)家の軒先にそっと置いて去る。文家の当主は高徳な人物として知られていた。洛音凡は重紫が普通の人間として生涯幸せに暮らせるように祈り、陰で守り続けると固く誓った。文家で我が子同然に可愛がられた子供は文紫(ぶんし)と名づけられる。文紫が参拝する寺院には洛音凡の肖像画が飾られていた。
第16話 仙門との縁
文家の当主は、残された文紫の幸せを願いながらこの世を去る。死ぬ間際に文紫の首飾りを指差し、自分の出自を確かめるよう言い残した。後妻は夫が亡くなるや否や、文家の高価な書画や骨董を売り払い、文紫の婚儀を取り消して自分の娘を嫁がせようと企(たくら)む。番頭や侍女がひどい目に遭う中、文紫は無自覚に邪気を放ってしまう。文家を追い出された文紫は、みんなを守りたいと願って南華(なんか)へ向かうが、道中には亡月(ぼうげつ)が待っていた。
第17話 もう1人の重紫
洛音凡は文紫を新しい弟子に取り、重紫と名づけた。部屋に置かれた衣装や飾り物を見て、重紫は自分のために洛音凡が用意したものだと思って喜ぶ。慕玉(ぼぎょく)からも洛音凡は弟子に優しい師匠だと教えられ、うれしさを感じながら、同時に違和感も覚えていた。相変わらず、閔雲中(びんうんちゅう)と司馬妙元(しばみょうげん)だけは重紫に厳しい。そんな中、慕玉は重紫を祖師(そし)殿に連れて行き、天魔(てんま)令と魔尊(まそん)・逆輪(ぎゃくりん)について教える。閔雲中は重紫の素性に疑問を抱き、慕玉に調査を命じる。
第18話 師姐の謎
洛音凡と楽しく暮らす重紫。洛音凡は弟子に法器を授けようとするが、どの法器にも選んでもらえない。落ち込む重紫に洛音凡は、転生前の重紫が使っていた法器を授ける。重紫は燕真珠(えんしんじゅ)から、自分に似ている師姐(ししゃ)がかつていたこと、彼女が仙門を裏切り、洛音凡によって処罰されたことを聞いてしまう。一方、下界では妖族の蛟(こう)王が騒ぎを起こし、青華(せいか)の申し出を受けた南華は、妖族退治へ向かうことに。重紫も下山を願い出るが、閔雲中に反対され…。
第19話 魔族の陰謀
蛟王が暴れているとの知らせを受けて南華の弟子たちは現場へ向かう。街は破壊され、大勢の負傷者であふれていた。待ち構えていた魔族の陰水仙(いんすいせん)は、迫害された民を装って重紫に近づく。秦珂(しんか)は志願者を連れて、蛟王がいる千尺(せんじゃく)窟へ向かう。秦珂たちが波にのまれたと聞き、司馬妙元が率いる弟子たちと重紫も河へ。河辺で陰水仙と引心魔(いんしんま)が立ちはだかる中、1人で千尺窟から戻って来た秦珂。陰水仙の剣が重紫の首元に迫った時、洛音凡が現れ…。
第20話 天山の地で
活発な動きを見せ始めた魔族に対処するべく、天山(てんざん)へやって来た重紫たち。魔族の攻撃により、海底の道に異変が起こる。海底の道はかつて逆輪が天山に攻め込むために作った秘密の抜け道のことだった。天山の結界を修復し、抜け道を塞ぐために、洛音凡は1人、五彩(ごさい)石を取りに不周(ふしゅう)山へ向かう。その直後、陰水仙たち魔族が現れ、重紫たちは天山を守るべく応戦する。戻って来た洛音凡は抜け道を塞ぐため、毒性の濁気(だくき)が充満する海底へと向かう。
第21話 さまざまな思いが渦巻く夜宴
洛音凡のかつての弟子にそっくりだと知った重紫は心が乱れ、師匠に自分が最も大切な弟子だと誓わせる。夜宴では、閔雲中と卓耀(たくよう)がしきりに洛音凡と卓雲姫(たくうんき)の縁談をまとめようとし、更には天山派の一番弟子である月喬(げっきょう)と重紫の結婚を一方的に進めようとしていた。そんな時、卓昊(たくこう)が現れ、重紫はかつて縁談を申し込んだ自分の許嫁だと主張する。洛音凡の法術が解け、亡くなった重紫とそっくりの彼女の姿に、秦珂と司馬妙元も心穏やかではなかった。
第22話 師匠の婚姻
負傷した重紫は、卓雲姫の治療を受ける。卓雲姫から嗜心(ししん)毒の恐怖について教わり、解毒薬をもらう。そこへ、嗜心毒に侵された民たちが卓雲姫を襲いに来た。何とか解毒薬を飲ませて民を救ったが、今度は洛音凡が毒に侵されてしまう。洛音凡は欲望を抑えて自力で解毒すると言い、重紫の解毒薬を飲まなかった。その後、重紫の治療のため、卓雲姫もともに紫竹峰へ戻ることになり、南華では洛音凡と卓雲姫の婚姻の噂(うわさ)が流れる。
第23話 すれ違う師弟
洛音凡と卓雲姫の婚儀を進めるため、南華は重紫を玉晨(ぎょくしん)峰に移そうとしていた。慕玉は洛音凡にいち早く警告するが、洛音凡は動かない。聴雪(ちょうせつ)から師匠の婚儀と玉晨峰の話を聞いた重紫は、自分は邪魔者なのかと思い悩む。嗜心毒に苦しむ洛音凡は久しぶりに弟子を呼び出すが、重紫は自ら紫竹峰を去る覚悟を師匠に告げる。想いが伝わらないことに苛立つ洛音凡。気持ちがすれ違ったまま、洛音凡は重紫が玉晨峰へ行くことに同意する。
第24話 重紫を愛する者と憎む者
紫竹峰で卓雲姫が殺害される。聴雪の証言によって重紫は下手人として捕らえられ、投獄されてしまう。洛音凡は重紫の詮議と釈放を願い出るが、卓耀と閔雲中は重紫の処刑を急ごうとする。重紫を愛する者と憎む者がはっきり分かれる中、洛音凡は卓昊の手を借り、重紫が魔族の煞異幻(さついげん)に操られていた証拠をつかむ。今の重紫が、かつて愛した重紫の生まれ変わりだと知った卓昊は、必死に父親を説得するが、卓耀は憎しみに支配されていた。
第25話 よみがえった邪気
ついに、重紫の詮議の日を迎える。重紫は卓雲姫の死とは無関係で魔族と結託などしていないと主張するが、聴雪は洛音凡と卓雲姫の婚姻に嫉妬して殺めたに違いないと訴える。秦珂は聴雪の話には証拠がないと主張して重紫を助けようとするが、閔雲中は最初から重紫の粛清を望んでいた。そんな中、洛音凡は重紫を極寒の地にある氷牢送りにすることを提案する。魔族が容易に近づけない氷牢に入れ、重紫の無実を証明しようと考えていた。
第26話 師匠の決意
月喬に襲われ、邪気を放った重紫。洛音凡は邪気を取り除くための鏡心(きょうしん)術を習得するまで、重紫を殺さずに、氷牢の中で眠らせておくことを決意する。一方、重紫を陥れた司馬妙元は、閔雲中に毒(どく)島幽閉の刑を命じられる。ひそかに氷牢を訪れた聴雪の手によって、重紫は氷鎖(ひょうさ)の刑に処され、苦しんでいた。3年後、毒島から南華に戻って来た司馬妙元だが、仙門での地位や立場を失ったことに納得できず、重紫への復讐を心に誓う。
第27話 魔界と仙界の狭間
氷鎖の刑の責め苦に耐えかねて錯乱した重紫。機が熟すのを待っていた燕真珠こと魔族の煞異幻と亡月は、重紫の前世の記憶を呼び覚ます。燕真珠が親友になったのも、最初から自分の邪気を利用するためだったと告白され、傷つく重紫。仙門を信じられなくなった重紫に、亡月は「万劫(ばんきょう)の復讐をしたくないか」とたたみかける。氷牢から逃げ出す際に、重紫を庇って燕真珠が命を落としてしまう。氷牢の異変を知って駆けつけた洛音凡に、重紫は…。
第28話 紫魔の誕生
紫竹峰を訪れた重紫は、洛音凡が不在の間に重華(ちょうか)宮を焼き払う。祖師殿にも火を放とうとしていた重紫は、秦珂に止められるが、魔剣の力で圧倒する。駆けつけた洛音凡はかつての弟子を諭すが、南華を恨む重紫は「私を殺すか。ともに死ぬしかない」と言い放ち、洛音凡に剣を向ける。閔雲中たちが駆けつけたところ、天の邪こと慕玉が正体を明かし、重紫を逃がす。重紫を忘れられない卓昊は、彼女への変わらぬ想いを伝えるが、拒絶されてしまう