『麗~花萌ゆる8人の皇子たち~』は、現代女性がタイムスリップしてしまい、高麗時代の王位争いに巻き込まれていくファンタジーロマンス時代劇。

 現代女性のハジンが池でおぼれたはずみで、気が付けば高麗時代の16歳の少女ヘ・スになっていて、その日からヘ・スとして高麗で暮らすことになるのだが、次期王座を巡って8人の皇子たちがきな臭い争いを繰り広げているただ中に放り込まれ、彼らと深く関わることになっていく…という物語。

 タイムスリップ物にはいろいろなパターンがあるが、本作では、タイムスリップするのは人物の身体ごとではなく、魂だけが移動して、すでに高麗に生きている人の身体にはいっていること。だから、26歳だった女性が16歳に若返り、本人はパニックに陥っているけれど、周囲の目からはもともとその時代にいた女性として自然に受け入れられていて、ヘ・スは意識だけが現代女性のまま生きていくことになるというのがポイントだ。

 ヘ・スは、初めは姉の夫である義理の兄の第8皇子に惹かれてゆくが、次第に、後世で‘血の君主’と呼ばれることになる第4皇子を、そうとわかりながら恐れを抱きつつも愛していってしまう~という波乱の展開になっていく。

 最近の韓国ドラマは美男の数を争うように大勢出て来るが、今回は8人も!

 しかも1話の王子たちの登場場面が浴場なので、みんな上半身はだけながらしどけない姿で現れる。いや、そこまでしてくれなくても…とちょっと照れてしまうほどの大盤振る舞いだ(笑)。アイドル、モデル出身の俳優、若手注目株…と美男子力にかけては他に追随を許さない韓国だけに麗しい花美男たちを揃えていて目移りするが、そんな若手のイケメン花盛りの中にあって、やはり主人公の第4皇子を演じるイ・ジュンギと、恋も政治でもライバルとなる第8皇子を演じるカン・ハヌルが特に光っている。

 特にイ・ジュンギの孤高感がハンパない!顔に傷があるがゆえに疎まれ、親の愛も受けられず、狼王子と呼ばれてしまうほど熾烈に生きてきた男。なんと切なく孤独なのか~と女心をさらいます。1話のラストで馬に乗ったままヘ・スを抱き上げて馬に乗せるシーンとか、そのあとの突き放しっぷりとかにやりと笑って去っていくくだりなんて、その冷たさがたまらん~という感じ。かと思えば1人で湯に浸かろうとした4皇子が目の前に突然現れたヘ・スに驚くシーンの、ハッとたじろいでほんの一瞬弱みをさらす瞳とのギャップ。「見たのか?」と傷のある自分の顔にコンプレックスを抱いているのがまるわかり。ああ、とげとげしさの裏にはこんなにも繊細な傷つきやすい心が隠れていたのかということが一瞬にしてわかって母性本能がくすぐられる。おまけに母親から「お前は私の恥で面汚しだ」と言い捨てられ打ちひしがれて泣きすさぶ姿なんて、代わりに私が愛してあげるから泣かないで~と多くの女性がハートをわしづかみにされてしまうだろう。

 そんな孤独な彼がヘ・スに出会い一途な愛を貫いていく姿はもう乙女のロマンだ。「二度とおれの前に現れるな」とか言ってたくせに「お前は俺のものだ」を連発するようになるし、この悲壮感、孤独感、切実感がすごく良くて無茶無茶かっこいい。

 一方、カン・ハヌル演じる第8皇子は柔らかく紳士的な優しい男で、妻の妹なのにいけないことだと思いながらもヘ・ス惹かれていってしまう。知的で穏やかな表情の内には研いだ爪を隠しているような部分もあって、その怜悧さがまた魅力。

 こんな風に、ヘ・スに対して北風と太陽のように対照的な2人の皇子のライバル対決が乙女心をくすぐります!

 他の皇子たちのエピソードもそれぞれ魅力的で、ミーハー的に、皇子たちの麗しさに身を焦がしながらも、兄弟間で繰り広げられる血みどろの権力争いがもの悲しく胸に迫ってくる。そして現代育ちのヘ・スが熾烈な王座争いを目の当たりにして神経をすり減らしていき、男のやり方と女の感じ方がすれ違ってしまうがゆえに、愛し合っているのに生まれてしまう溝…。ヘ・スが歴史を知っていたがゆえに起きてしまう悲劇もあり、大人好みの、切なく、ものの哀れを誘うドラマになっている。

韓流ナビゲーター 田代親世